
景気動向
豪州経済は総じて底堅く推移
豪州景気は、昨年12 月のクイーンズランド州の洪水被害による輸出の弱含みなどで足踏みが続いているものの、個人消費が市場予想をやや上回る形で総じて堅調に推移しています。
今後は、洪水被害からの復興需要や日本の震災復興、電力不足などに伴う資源需要の増加、雇用環境の改善による消費の下支え、資源関連投資の増加などで年後半は景気のモメンタムが強まっていくと思われます。
輸出は洪水の影響で停滞
2月の輸出(前年比+12.1%)は洪水被害の影響などで資源関連品目が伸び悩み、貿易収支は11カ月ぶりの赤字をつけました。1-2 月平均(季節調整済み)が10-12月期対比で▲6.0%と下ぶれ、特に輸出全体の約2割を占める石炭が同3割減となっていることが大きく影響しています。財務省によると、石炭鉱山の洪水被害からの復旧はやや遅れており、影響は4−6月期にずれ込むとしています。ただ、7-9月期以降は鉱山の復旧や日本の復興需要などで石炭輸出は徐々に回復していくと思われます。

企業部門は堅調
一方、企業部門は堅調で、3月の企業信頼感指数が9ポイントと2000年以降の平均(6.3ポイント)を上回る水準を維持したほか、設備稼働率は81.5%と平均並みの水準で推移しました。企業部門のうち特に鉱業部門は、過去最高水準にある交易条件の恩恵を受けています。
雇用は徐々に逼迫
雇用は改善が続いており、3月の失業率は4.9%と3カ月ぶりに4%台へ低下しました。また、雇用者数は前年比+2.9%と、4カ月ぶりに増加ペースが加速しており、好調な資源部門関連で労働力が不足し始めており、労働需給は徐々に逼迫し始めています。

個人消費は底入れの兆し
低調だった個人消費も、底入れを探る動きがみられます。2月の名目小売売上高は前年比+3.6%と、5カ月ぶりの高い伸びをみせ、最も伸びの高い食料品は、クイーンズランド州の浸水に伴う食料品価格上昇が影響と思われますが、それ以外の品目も増加しており、ローン金利の上昇などで消費マインドの弱含みが続いているなかでも、基調は上向いています。

ギラード政権の困難が増す
州議会選挙での労働党の敗北が続き、労働党政権への逆風となっています。3月26日、ニューサウスウェルズ州で州議会上下院の総選挙では、16年間にわたり政権を担ってきた労働党が、上下院ともに議席を大きく失い、保守連合に歴史的な大敗を喫しました。労働党は昨年11月にも、ビクトリア州で保守連合に政権を奪われており、今回の選挙で全8州のうち、3州が保守連合政権となりました。
今後の展望
復興需要と資源部門を中心とする設備投資の増加に牽引され、景気の回復基調は強まると思われる。復興需要は、年央にかけ顕在化すると思われます。ギラード政権が1月に提案した56億豪ドル規模の水害復興計画は3月末に議会で可決されており、今後、家屋の復旧や港湾・鉄道などのインフラ投資を拡大する見込みです。
また10〜12月期の企業の設備投資計画(短期および長期)は、資源需要を追い風とする鉱業部門を中心に、前年比+28.7%の大幅増加となっており、資源部門の設備投資は多年度にわたるものが多く、当面の景気を支えると思われます。
洪水、東日本大震災による影響
豪財務省は4月3日に東日本大震災による資源需要の一時的な鈍化で豪州の輸出が10/11年度(10年7月〜11年6月期)は20億豪ドル減少するなどで実質GDP成長率は0.25%鈍化する見通しを示しました。震災や津波で港湾や火力発電所が破損し、鉄鋼生産も鈍化するためとしています。また、豪州の洪水による被害額については、石炭生産で60 億豪ドル、農作物は20 億豪ドルなど合計で約90 億豪ドルとなり、GDP 比では0.5%の影響があるとしています。財務省は10年11月に発表した財政見通しの中間評価で10/11年度実質GDP成長率を前年比+3.25%、11/12年度は同+3.75%と想定していましたが、10/11年度は下方修正、11/12年度のやや強気の見通しに修正されると思われます。
以上を踏まえると、11年の景気は年前半に停滞を余儀なくされるも、年後半は輸出の伸びの高まりや復興需要によって成長テンポが高まり、通年では実質GDP成長率は+2.7%を予想します。
金利動向
豪州中銀
5日、豪州準備銀行は定例の金融政策決定会合を開催し、4回連続で政策金利を4.75%に据え置きました。当局は、足元の世界経済はアジア新興国を中心に拡大が続いており、先月の東日本大震災は日本経済に対して短期的に甚大な影響を及ぼすものの、アジア経済への影響は限定的との見方を示しました。一方、国際商品市況の高騰により多くの国々が物価上昇圧力に直面しており、アジア新興国の大半が金融引き締めに舵を切っているものの、依然実質金利がマイナスの国もみられるなど、金融政策のスタンスは緩和的な状況が続いているとしています。
| 政策金利の推移 |
国内経済については前回と同様、(1)高水準の交易条件により、資源産業を中心に企業部門の設備投資が増加し始めている、(2)洪水被害による生産の減少は数カ月で回復する(ただし回復ペースは従来の想定より緩やか)、(3)今後は復興需要が緩やかに高まる、とした。豪州のファンダメンタルズは良好とのRBA の見方は変わっていません。
4〜6月期以降、復興需要などを追い風に景気が再加速すると見込まれるなか、RBA は年央にかけて予防的な利上げを行い、11年末時点で政策金利は5.00〜5.25%程度を想定しています。
市場金利は上昇、利上げを織り込みだす
3月11日の東日本大震災や原発事故などで3月中旬に世界の金融市場が不安定な動きとなるなか、債券市場も一時、金利先物が利下げを織り込む動きもみせていたが、その後金融市場は落ち着きを取り戻した。
90日物BA利回りは4.9%と、前月(4.8%)から小幅上昇、また長期金利(10年物国債利回り)は5.6%と、前月(5.4%)から上昇しました。政策金利の引き上げが年央以降に再開されるこを織り込み、当面、長短金利ともに上昇傾向にあると思われます。

| 短期金利 | 株式相場ASX200 |
為替市場動向
為替動向
豪ドルは最高値圏で推移しています。3月11日の東日本大震災発生直後は、リスク回避の動きから一時1豪ドル=0.97ドル台まで下落しましたが、市場が落ち着きを取り戻しリスク選好度が強まるに伴い、3月25日には1豪ドル=1.028ドルまで上昇、その後も豪州の雇用統計が市場予想を上回る改善をみせたことなどを材料に強含み、4月8日には一時1豪ドル=1.0585ドルと過去最高値を更新しました。
このように足元の対米ドル相場は高値圏で推移しており、日本円に対しても同様の状況です。
先行きは、米国株など主要市場の動向次第では短期的に上値追いの可能性もありますが、米国の追加量的緩和の終了が意識されていることから、対米ドルでは上昇余地は限定的と思われます。対日本円では、ドル円が日銀の追加金融緩和や協調為替介入で円高圧力が一旦後退していることも支援材料となり、上昇圧力が強まる可能性と思われます。
豪ドルの想定レンジは、11年年末にかけては、対ドルで1.00〜1.15米ドル、対円で83円〜100円程度を想定しています。
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株式会社 アローヘッズアドバイザーズ 取締役 シニアアドバイザー 古谷淳
昭和37年 生まれ
1986年3月 東京工業大学経営工学部卒業、BA。
1988年3月 東京工業大学総合理工学部システム科学修了、理学修士。
1988年4月 大和證券株式会社に入社。国債の店頭オプション取引に従事。
1991年1月 メリルリンチ証券会社東京支店にて円建債券取引全般を行う。
1994年3月 パリバ証券(現在のBNPパリバ証券)にて主要通貨の金利取引を行い際立った業績を残す。
2000年8月 ドレスナー証券会社にて、東京支店のボードメンバーの一員となる。
